アジアのお箸

中国語・韓国語・ベトナム語・広東語が似ているので同時学習してみるブログ(東アジア漢字文化圏の言語の比較・対照)

【良心】ということば

【良心】ということばは日中韓越に共通して存在するのでご紹介。今回は久々に漢字音について見てみる。

 

日本語
 りょうしん【良心】

中国語(普通話
 liángxīn【良心】
  可惜呀,地球人还真是没良心呢。
  kěxī ya   dìqiúrén hái zhēn shì méi liángxīn ne  
  (でも、地球人ってぇのは、案外薄情なんだねぇ。)

韓国語
 양심【良心】
  양심의 가책
  (良心の呵責)

ベトナム語
 lương tâm【良心】
  tiếng gọi của lương tâm
  (良心の呼び声)


各言語の漢字音について考えてみる。

 

まずは【良】について。
昔の中国語の音は"liang"だったと推定されているらしい。
現代中国語はliángと、昔の音をほぼそのまま残している。
韓国語は양(yang)と一見違うようだが、韓国では語頭のラ行の音がナ行に変わったり、落ちてなくなったりする。北朝鮮では【良】は량(ryang)でありこちらの方が古い形である。こうなると昔の中国語の音とほぼ同じだ。
日本語は「りょう」だが、歴史的仮名遣いでは「りゃう」となり、こちらが古い形である。昔の中国語の音の語末の-ngが日本漢字音では「う」に変化しているという法則がある。なので、「りゃう」から"liang"の音にさかのぼることができる。
ベトナム語は勉強不足だが、lươngと"liang"は語頭子音と語末子音が同じで、だいたい似ている。

 

次に【心】について。
昔の中国語の音は"sim"だったと推定されているらしい。
現代中国語のxīnは、語末の-mが-nに変化したものだ。
韓国語の심(sim)は、昔の中国語の音をよく残している。
日本語は「しん」だが、歴史的仮名遣いでは「しむ」となり、これも昔の中国語の音にかなり近い。
ベトナム語はtâmだが、ベトナム漢字音では語頭の子音の"s"っぽい音が"t"っぽい音によく変化している。語末の"m"は昔の中国語の音を残している。

 

このように、現在の各言語の漢字音は少しずつ異なっているが、それぞれ古い中国語の音から枝分かれして変化したものであることがよくわかる。

 

こういうことを見るのがおもしろい。