アジアのお箸

中国語・韓国語・ベトナム語・広東語が似ているので同時学習してみるブログ(東アジア漢字文化圏の言語の比較・対照)

香港料理を食べに行って、モヤモヤしてしまった

昨年、サンフランシスコの中華街で麺料理を食べたのだが、それがめちゃくちゃおいしかった。アメリカで食べたのものの中で、アメリカ料理やメキシコ料理なんかよりも、これが一番おいしかった。

 

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あの味がどうしても忘れられない。そのときに撮ったメニューの写真を見返してみると、"鮮蝦雲呑面"とあった。調べてみると、香港のエビのワンタンメンらしい。日本で食べられるところを見つけて、早速行ってきた。

 

 

そうそうこれこれ。麺が妙にゴワゴワしているが不思議とスルスルいけて、これがまた絶妙においしい。先日のブログにtotoluさんよりコメントをいただきましたが、"撈麵"というらしい(お教えいただきありがとうございました)。スープはサンフランシスコで口にしたものよりも少々安っぽい化学調味料のノッペリした味だったのが残念だったが、まあおいしかった。というよりサンフランシスコの店が絶品すぎたのだ。

 

 

しかしせっかくのおいしい料理だったが、店の中を見ていると、なんともいえない感覚になる。

 

 

来店客のメッセージが店の壁にたくさん書かれているのだが、その多くに「支持香港警察」とある。繁体字簡体字で大量に「支持香港警察」(なかには「支持中華人民共和国」というメッセージも)。

 

 

最初はよくわからなかったのだが、どうやら香港民主化運動を鎮圧する香港警察を支持するというもののようだ。そしてその香港警察のバックには中国共産党がある。ニュースをみていると、現在カナダに亡命している周庭氏(香港民主化運動の女性)に出頭を要請しているのも香港警察のようだ。

 


香港の政治的な問題について安易に意見を述べるのは控えたい。それぞれの立場がある。

 


中国の歴史を見ていると、各地で小国がポコポコ沸き上がってお互いに戦争をしまくって、どこかの国が天下を統一する。統一国家が崩壊するとまた各地で小国がポコポコ出てきてお互いに戦争をしまくって、またどこかの国が天下を統一する。その繰り返しのように感じられる。だからあれだけの広大な土地と人間を抑え込むには、強力な独裁者が強大な権力で国をまとめ上げないといけないのかもしれない。昔中国に生まれ育った日本人が言っていたのだが、「今の政府が無くなって、無秩序になった中国は想像したくない」とぼそっとこぼしていた。

 


中国共産党としては香港はもともと中国だったものをイギリスに99年間盗られてしまったのだから、返還されたら中国本土と同じように扱いたいのだろう。香港の民主化を安易に認めると、他の中国人からも民主化の声が出てきて、今の中国共産党によるある種の秩序が転覆されてしまうとおそれているのかもしれない。また香港民主化のバックには、アメリカ・イギリス・日本のような西側諸国がついていると受け取ってしまうのも自然だ。

 


語弊を恐れずに無理矢理日本で例えてみる。戦後アメリカに占領されつづけていた沖縄が、日本に返還されるというときに、例えば琉球独立派の人々が日本返還に反対の大規模なデモを起こし、そのバックには中国やロシアがついている可能性があるとすると・・・。日本政府や本土の日本人はこれをどうとらえ、どのように反応するのだろうか。(不適切な例えで不快に感じられる方がおられましたら申し訳ありません。あくまで思考実験です。)

 


───しかしそれにしても、この香港料理店に大量に書かれた「支持香港警察」の数々の文字をみると、ものすごい「圧」を感じてしまい、少しぞっとするところもある。

 


前に、香港生まれ日本育ちの方と少し話をすることがあった。彼が「今の香港は怖いところです」とぼそっとつぶやいたのを覚えている。多くは語らなかったが、つまりはそういうことなのだろう。

 

 

私が趣味で中国語を学ぶとき、日本の一般的なテキストに基づくことになる。それは普通話であり、中国北方の巻き舌を伴った標準的とされる発音を模倣することになる。私が超カタコトの中国語で何かを中華系の人に対して話そうとすると、そのこと自体がある種の政治的なメッセージを伴うことになってしまうのかもしれない。

 


せっかくおいしい香港ワンタンメンを食べに行ったのに、非常にモヤモヤとした気分になってしまった。