アジアのお箸

中国語(北京語・広東語)・韓国語・ベトナム語が似ているので同時学習してみるブログ。英語もときどき。

中日韓越の漢字音、どう対応している? 第24回 韻尾 子音 入声以外(咸・深・山・臻・宕・梗・曽・江・通摂)

中国語・日本語・韓国語・ベトナム語の漢字音はよく似ていたり少し違っていたりする。漢字の音を1000年以上さかのぼって調べると、そこには一定の法則がみえてくる。極力専門用語を使わずにその法則をシンプルに整理し、これらの言語を同時に学ぶときに役立てたい───。中国音韻学を独学しながら、対応の法則をまとめ、練習問題も用意して教科書の形を目指した怪作シリーズです。


今回から韻尾(特にお尻の子音)です。これはかなりとっつきやすいです。中国語や韓国語やベトナム語を学んだことがある人なら、もしかしたら部分的に聞いたことがある話や、経験的になんとなく気づきやすいところになります。


今回は中古音(主に隋唐代の中国語)で韻尾(特にお尻の子音)がm,n,ŋ,uŋだった場合に、どうなっているかをみる。あくまで全体像をざっくりと把握するために作っているため、厳密には妥当でない部分があるかもしれない。


さて下記の表となる。右へスライドして見てね。



十六摂 中古音(平山) 中国北京音(拼音) 中国広東音(粵拼) 日本呉音 日本漢音 韓国朝鮮音 ベトナム音
咸,深(入声以外) m n m m
ɒm gǎn gam2 カン カン cảm
山,臻(入声以外) n n n n
tɕin zhēn zan1 シン シン chân
宕,梗,曽,江,通(入声以外) ŋ,uŋ ng ng ウ,エ行+イ ng,nh
iɑŋ yáng joeng4 ヨウ ヨウ dương
miɐŋ míng ming4 ミョウ メイ minh


上の表はかなり簡略化しているが、これでもまだわかりにくい。これをめちゃくちゃおおまかにしてしまうと、次のようになる。


中国北京音n - 中国広東音m - 日本音ン - 韓国朝鮮音ㅁ - ベトナム音m


中国北京音n - 中国広東音n - 日本音ン - 韓国朝鮮音ㄴ - ベトナム音n


中国北京音ng - 中国広東音ng - 日本音ウ,エ行+イ - 韓国朝鮮音ㅇ - ベトナム音ng,nh


上が今回のまとめ。アジアの言語を少しかじったことがある人なら、なんとなく知っているかもしれない。


次回は韻尾(特にお尻の子音)がp,t,kの場合をみる。これも結構有名でとっつきやすい。




参考にしたサイト
https://kodaimoji.chowder.jp/chinese-phonology/pdf/oningaku.pdf
https://en.wikipedia.org/wiki/Middle_Chinese_finals


参考文献
平山久雄(1967)「中古漢語の音韻」『中国文化叢書1 言語』pp.112-166
平山久雄(2022)「中古音講義」
佐藤昭(2002)「中国語語音史」
沼本克明(1986,2023)「日本漢字音の歴史」
河野六郎(1979)「朝鮮漢字音の研究」『河野六郎著作集2』pp.295-512
李敦柱(2004)「漢字音韻学の理解」
三根谷徹(1993)「中古漢語と越南漢字音」