アジアのお箸

中国語・韓国語・ベトナム語・広東語が似ているので同時学習してみるブログ(東アジア漢字文化圏の言語の比較・対照)

【泰山鳴動 鼠一匹】という表現にだまされた!ちくしょー!!!

韓国語を学んでいたときに印象的な表現に出会った。
"태산명동 서일필"
すべて漢語系語彙で、漢字に直すと、"泰山鳴動 鼠一匹"となる。
その意味は「泰山(中国山東省の有名な山)が鳴り動いて鼠が一匹出てきただけ。つまり大騒ぎしたわりにたいしたことのないたとえ」。

日本語にも同じ表現があるようで、「泰山(大山)鳴動して鼠一匹」というらしい。泰山は大山とも書く。
なかなか渋い表現だなとそのときは思った。中国の故事に由来するのかなとも思っていた。

ところが今調べなおしてみると、実はこれ、元々は西洋のことわざであり、それを日本人が翻訳したものだったのだ。

dictionary.goo.ne.jp

そもそも中国語にはこんな表現は存在しないらしい。昔の日本人が西洋のことわざをわざわざ中国の故事であるかのように翻訳したのだ。21世紀の私はまんまと騙された。「泰山鳴動して鼠一匹」という字面を見て、これの一体どこが西洋のことわざだと思えるのだろうか。おもいっきり中国の逸話ですよという雰囲気をかもしだしているではないか───。そして「泰山鳴動して鼠一匹」という日本語が韓国語に流入し"태산명동 서일필(大山鳴動 鼠一匹)"と漢字語だらけに訳されて、なおさら中国の故事のような顔をしている。昔これを翻訳した日本人が天国でほくそ笑んでいる姿が目に浮かぶ。

下のサイトには中国人が韓国ドラマでこの表現を見つけた様子が書かれている。日本人が西洋のことわざをわざわざ"汉文调(漢文調)"に翻訳したことを取り上げ、"绝妙的翻译"と題している。

www.zhihu.com

このサイトにあるように、中国語では"雷声大雨点小(léishēng dà yǔdiǎn xiǎo)"というらしい。まちがっても中国で"泰山鳴動鼠一匹"などとドヤ顔で言わないように気をつけたい───。