アジアのお箸

中国語・韓国語・ベトナム語・広東語が似ているので同時学習してみるブログ(東アジア漢字文化圏の言語の比較・対照)

(再掲) 一方通行の【相】

(本記事は2022-09-07の投稿の再掲です)


Duolingoでいい例文を見た。




你要相信你自己。

You must believe in yourself.




そうだよな。自分自身を信じないといけないよな。




さてここで使われている【相信 xiang1xin4】は「信じる」という意味。決して「互いに信じ合う」のではない。




【相】は「互いに」という双方向の動作のみを表すと思っていたが、【相信】の【相】は、おそらく一方通行の動作を表しているのではないか。




中日辞典の【相】には、「一方が他方に働きかける行為や態度を表す。主として単音節動詞を修飾する」という用法が書かれている。

漢和辞典の【相】には、「ある対象が想定される関係の中で動作が一方向にのみ向かうことを表す。(訳出しないか、対象を「私に」「彼に」などと明示して訳す)」とある。




この意味で【相】を使う単語は、日韓越ではほぼ皆無なのではないか。




(一部、微妙なものがあり、例えば日本語の【相談】は、場合によっては相談する側が相談される側に悩み事を伝える等という一方向的な動作に重点を置くともとらえられるが(例 「お忙しい中、すみません。相談があります。」)、相談された側が相談する側に返答することが一般的であり、そこから相互の意見交換が続くことも多く、また相談する側も返答や意見交換を期待するのが自然と考えられるので、双方向の話し合いという意味合いの方が強いと思う。以上、【相談】という日本語の用法の内省をしてみたが、頭が痛くなってきた)




話を戻すと、中国語の【相信】は「互いに信じ合う」のではなく、「〜を信じる」という意味。




中国語は一文字よりも二文字の熟語を好む傾向があると聞いたことがある(例「帽」→「帽子」)。

その流れの中で、「信」→「相信」というように生まれたのだろうか?




辞書を眺めながらまた頭をかかえてしまう。




最後に【相】が一方通行ではなく、「互いに」の意味で使われている表現の例を、日中韓越でピックアップしてみる。




日本語

【相違 そうい】互いに異なること。




中国語(普通話

【相识 xiang1shi2】知り合う。




韓国語

【相関 상관】関係。かかわり。




ベトナム語

【相愛 tương ái】男女が互いに愛し合う。